成田出発が少し遅れたアリタリア航空機は、五時五分、定刻より10分早くミラノへ到着した。待っていた車に一行24人分のスキーとバゲージを積む。全員が乗り込むと、おもむろにアオスタへ向かって走り始める。

ノヴァーラから乗ったアウトストラーダA4をひた走る途中、強烈な睡魔に襲われ眠ってしまう。あっと気が付くともうアオスタだ。ドライバーがホテルの位置を知らず、街の中でうろうろしたが、それでも八時半にはホテルエウローパに到着した。実に近い。

ホテル・エウローパ=HOTEL EUROPAは、アオスタの中心にある格式あるホテルだ。イタリアのどこの街へ行っても、同名のホテル・エウローパがあるが、これは別にホテルチェーンという訳ではない。読んで字のごとくヨーロッパという意味のイタリア語である。出て左に10mも行くとPiazza Chanoux=シャヌー広場で街の中心である。右へ150mも行けばアオスタ駅なのでアクセスは非常にいい。

アオスタ州については一月号を読んで頂くとして、州都アオスタはローマ時代から二千年以上の歴史をもつ古都である。アウグストス帝の時代に作られた長方形の街は碁盤の目状に道が走り、周囲には当時の城壁が残っている。街の中心に今も残るPorta Pretoria=プレトリア門、アオスタにしかない屋根付きの古代円形劇場=フォロロマーノが日常の中に混在する、落ち着いた雰囲気のある街である。

歴史の街であると当時に、アルプスの水を集め蛇行して流れる、Fiume Dora Baltea=ドーラ・バルテア川沿いに走る、イタリアとフランス、スイスを結ぶ街道の要である。トリノからアオスタまでは一時間強。ここからクールマイユール〜モンブラン・トンネルを抜ければシャモニー〜ジュネーヴへと二時間強で行ける。更に、グランサンベルナルド・トンネルでスイスのマルティニーへも通じる要衝の位置を占めている。

今日からここに六泊してクールマイユール、チェルヴィニア、ピーラ、ラトゥイールの四大スキー場を滑る。アフタースキーは、華の都フィレンツェへ二泊して遊んでしまう。四大スキー場とふたつの古都をいっぺんに体験する、ユニーク贅沢アオスタスーパースキーとフィレンツェの開幕である。

さあ、いよいよ、明日から思い切り滑るのだ。ベッドに入り眼を閉じると、日本を出るまでの悪戦苦闘はすっかり忘れ、幸福な気持ちがひたひたと満ちてくるのであった。

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アオスタは二千年以上の歴史がある古都 |
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アオスタにしかない屋根付きの古代円形劇場
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落ち着いた雰囲気のアオスタの街。
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