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「ギョエテとはおれのことかとゲーテ言い」の巻

 一月十一日、ピーラを滑った翌朝八時、一行はチェルヴィニアへと向かった。アオスタからChatillon=シャティオンまでトリノ、ミラノ方向へ20分程戻り、Saint Vincent=サンヴェンサンの脇をチェルヴィニアへ向けて上っていく。大型バスで行くので約一時間の行程である。

 シャティオンだのサンヴェンサンという地名は聞こえるままに表記しているのだが、ちょっとイタリア語らしくないフランス風の響きが感じられる。それもそのはずで、イタリアの王家サヴォイアが、十一世紀から第二次大戦までアルプス一帯、アオスタやピエモンテからフランスの南東部も統治していたので、このあたりはイタリア語、フランス語のバイリンガルの土地となったのである。だから、表記も人々の発音も時としてフランス風が混じって不思議はない。

 クールマイユールだって、アオスタっ子は、どーも、クーマイヤーだの、クーメイユォーと発音しているように聞こえる。
「クールマイユール」
と日本語表記したのは、「いざイタリア」と言うイタリアスキーの紹介パンフレットを発行した時が最初で、1984年のことだからもう十四年も前になる。当時は未だアオスタに来たことはなかったので、アリタリア東京にいるイタリア人に発音して貰いながら、地名を表記したのである。

 「クールマイユール」は時間の経過とともに、すっかり定着してしまったので今更変えられないが、もしもその時、ヴァルドスターノ=ヴァッレ・ダアオスタの住人、アオスタっ子に聞いてれば違う表記をしたかも知れないと思うのである。

 そう考えると、新聞や放送の発音や表記などにも、実に変なのが多い。現地で耳にする音とはまるで違うし、実際とそぐわないと思うことが多いのである。たとえばベニスがヴェネツィアのことだなんてヴェネツィアっ子は夢にも思わないはずである。

 最近老眼がきたので、ベニスなんて書いてあると、あらら、ペニスがどうしてこんなとこに出てきちゃうのかと、スッパリ、文脈からはずれることがある。まぎらわしいからやっぱり、ヴェネツィアと表記して欲しい。

 もちろんいくら原音に忠実に表記をしようとしても限界のあることは知っている。ローマ=RomaのようなRの音は書けはしない。だが、できるだけ原音に近づく努力をするのが対象への礼儀であり、事実を正確に把握する第一歩ではないだろうか。

 さもないと、ベニスではBenisu、ベネチアではBenechiaという、この世に実在しない架空の都市を、おおかたの日本人が永遠にさまようことになる。原音から遠のくにつれて、実在するVenezia=ヴェネツィアからは、ますます離れて遠ざかってしまうのである。

 このことは単に原音と表記の問題には終わらず、人が本質や実体から大きくずれていくもとになっているように思える。ニッポン人が世界標準から微妙にずれていると考えられているのは、こうしたことにも一因があるのではないだろうか。


 岡戸正人がマルモラーダに行った時の話。『仕事終わったあとで、イタリア人がいろんなところへ連れて行ってくれたんですわ。なんとかいう街で、歩いたり船乗ったりしてから、飯食ってるときに、
「どうだヴェネツィアは気に入ったか」
というよーなことを聞くんで、適当に
「スンバらしい、気に入った」
って返事しとったんですワ。したら
「そーかそれはよかった。他にどこか日本に帰る前に見ておきたいとこはあるか」
って言うから、もうさんざん連れて行ってくれて悪いなぁと思ったけど、日本で有名なベニスってのが、ちらっと頭に浮かんだんですわ。それでよせばいいのに
「できれば、ベニスってとこに行ってみたい」
って言っちゃったら、マルコが
「エッ、ナニ、ワカラナーイ」
って顔になったんで、も一回
「ベニスにイッテミターイ」
て繰り返しますわね。

 段々マルコがなんともいえない複雑な顔になって、むぐむぐと口ごもりながら次々言うんだけど、こっちもイタリア語分からんですから。なかなか通じなくて何度か聞いてるうちに、今いるヴェネツィアてのが、どーもベニスらしいなと分かってきたんですわ。

 まー、なんつーか、恥ずかしいというか、申し訳ないってのか。あっちは、こいつ、いったい、ナニ考えとんのかと思ったでしょうけどねぇ。ホントに、バツ悪かったなぁ。ムハハハハ』

 岡戸とマルコのかけあいが目に浮かぶようだが、学校でヴェネツィアと教え、日常生活でもそう表記していれば、少なくともこうはならなかったにちがいない。

 寄り道ついでにもひとつ、プラダのアウトレットがあると書いたMonte Varchi=モンテヴァルキのことだが、こないだ雑誌をぱらぱらめくってたら、H交通社のイタリアのアウトレットショッピングツアーの広告がでていて、そこにはなんと
「プラダのアウトレットがあるモンテバルーチにも行きます」
と書いあったんですワ。よーく考えて見ると、フムフムなるほど、そうも読めるのであるが、しっかし、ホントにもーっ。おめさんたち、どこさえぐんだー。ドンドン。と思わず机を叩いてしまったのであった。


 突然ですがここで問題です。イタリアには公認のカジノがいくつあるでしょうか。答えは、そうです。次の三ヶ所にあるが正解。ヴェネツィアのリド、サンレモ、そしてサンヴェンサンである。サンヴェンサンはアオスタ一超豪華なホテルにカジノがあることで有名である。もちろん、カジノであるから、入るにはタイもジャケットも必要で、チノパンにセーターとかでは入れてくれない。

 ミラノからバスでチェルヴィニアやサンヴェンサンへ行くときは、シャティオンがポイントである。ここで乗り換えないことには、チェルヴィニアに、たどり着けないからである。と言うわけで、Chatillon=シャティオンは、覚えておいて損はない。あなたもバスで行くなら
「チャテイロンはまだか」
なんて言っててはいけない。
「セントヴィンセントにバクチしに行きたい」
なんつーのはもっとよくない。そういう人はチェルヴィニアにはいつまでたってもたどり着けないかもしれない。

 スキーも滑りたいがギャンブルも好きだというひとは、サンヴェンサンに泊まって昼はチェルヴィニアピーラで滑り、夜はここで思いっきり稼いで、旅費をひねり出すのもいいかもしれない。ここに滞在客が五泊するのであれば、前半の二〜三晩目までは勝たしてくれるらしいから、後半あまり熱くならないで勝ち逃げできる自信のある人にはぴったりである。




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