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「イタリアで話しかけられたらご用心」の巻

 イタリアへ行って、観光したり、買い物したりしてると、なんたらかんたら話しかけられた経験ありませんか。こーいう奴ね。気ぃつけなアカンの。街で話しかけてくるケースは殆ど完璧100%、ヤバイと思った方がいい。 ミラノのドゥオモ広場近くなんかで、「シニョーレ」とかカップル二人組かなんかに呼び止められて、「背中に鳥のフンがついますよ」だの、
「背中にアイスクリームがベッチャリよ」なんて、
身振り手振りで話しかけられたとしますワね。

 「ちょっと見てみて、ホラ、これこれ」

ふたりが指さすけど、カメレオンじゃあるまいし、見えるわきゃないよね、背中なんだから。

 どれ、何がついてんのか見てみようかってんで、肩のショルダーバッグをおろして、上着脱ごうとすると、カップルも手伝ってくれて、やったら親切なんだなぁ。これが。
「気ぃつけないとねえ。ローマじゃもっとヒドいけど、ミラノにもこういうワルいのがいるんだよ」

自分たちのハンカチだのティッシュなんか出して、拭いてくれんだ。拭いてる間もひとりがなんたらかんたら話しかけながら、付いてる鳥のフンだかアイスクリームだかも、きれいにしてくれる。

 こっちはイタリア語分からないから、ツタない英語で、「サンキューベリーマッチ。ユーアーソーカインド。サンキュー。ホントーニ」なんて、ふたりの親切に感謝したりしてて、ふっと、足元見たらバッグがない。

 こっちが拭いてるほーに、気ぃ取られてるスキに、テキのもう一人の女がこちらのショルダーバッグ持って逃げちゃったんだねぇ。

 大体こういうとき、バッグの中には、ま、貴重品っていうか、財布に現金、トラベラーズチェック、パスポート、航空券、クレデイットカードなんかが入ってて、ヘタすりゃ日本の運転免許や、IDカードみたいな、失くすと困るものがいっぱい入ってるものなのであります。

 テキも巧妙だけど、やられる方もスキだらけ。サンキューなんて感謝なんかしてる場合かっつーの、ホントに。でもアナタ、普通街を歩いてて知らない人呼び止めたり、話しかけたりしますか。しませんよね、やっぱり。そんなことして変に思われるのはイヤだから、しないですよね。

 イイ人はめったやたら、人呼び止めたり、話しかけたりしないのが、世界共通の心理と行動様式なんであります。イタリアに行った途端、すっかり、ユルんでうち解けた気持ちになるのは分かるけど、人に声かけられたらとりあえず警戒モードに入ろう。ワルい奴がいるのはどこも同じ。日本を離れたら、回りは取りあえずワルい奴がワンサといるのだとお考えになられた方がよろしかないですか。それにしてもホントにヒデーよなぁ。いったい、どーなっちゃってんだ。イタリア。


 ローマ・フィウミチーノ空港で働いていた頃、時々空港警察から呼ばれることがあった。と言っても、こちらがヤバイことで呼び出し食ってたわけじゃない。空港で置き引きにあったジャッポネーゼの調書を取るのに、ただでさえ言葉が通じないのが、被害にあった日本人が動転したり興奮したりで、ますます通じないもんで、通訳に呼ばれるのである。

 ある日、警察から呼ばれて行ってみると、四〜五人の日本人が調書を取られてる最中で、それも全員が動転、興奮、憤慨のまっ最中なのだった。あとで分かったのだが、それはテレビ局の偉いさん一行であった。

 どんなエラい人でもこういう場合は大体順序良く、動転→興奮→憤慨→悲嘆→冷静→諦観→諦念→沈着→達観という道筋をたどるらしく、この道は長く曲がりくねって、なかなか最後の「達観」へたどりつくまでに時間がかかるようなのである。

 こちらの顔を見るや、調書の中に、保険の手続きに必要なので、盗難にあったことを書いてほしいと言う。
「そーですよね。だから今、被害届を書いてますから、これを日本に帰ってから保険会社に提出して下さい」
「いや、そーなんですけど、実は盗られたバッグの中にもう一通、他の被害届が入っていて、それも盗られてしまったので、そのこともこの被害届の中に書いてほしいと言ってるのですが、なかなか分かってもらえなくて」
というかなり込み入った状況なのだった。

 「まあ、まあ、まあ。順序立ててお話し下さい」
なだめて聞いてる内に分かったのだが、この人達はここで盗難にあったばかりでなく、空港へ来る前にローマでも被害にあったらしい。泊まった五つ星のホテルで、旅行鞄に入れといた、ン百万円はする宝石や金銭を、外出中に部屋へ侵入した何者かに鍵を壊され盗られてしまったという。

 ローマへ来る前にはブラジルにも寄って来たということで、歓待の記念に、現地で発掘された国宝級の貴重な化石を贈られたそうなのである。
「化石を盗られてしまったのがなによりも残念だ」
副社長は眉を曇らせ、
「相手が次に日本へ来た時なんと申し訳をしたらよいか。てははは」
先を思って殆ど落涙寸前なのだった。横から編成局長は
「日本へ帰る前日だったので、時間がなくて、ホテルの責任の追及もできなかった。アレは従業員でないとできない内部の犯罪だ」
正しいかもしれないが遅すぎる分析を加えるのだった。


 帰国の日空港へ来て、チェックインするため、副社長夫人を荷物番に残して、男性はチェックインカウンターへ向かった。搭乗手続きを終えて、中へ入ろうとしたらバッグの数が足りない。全員血眼で何度も確認したが、やっぱりあるはずの副社長のバッグが消えていたのである。

 状況を思い返してみると、残された奥さんは足元にみんなの荷物を置いて待っていたのだが、そこへ外人がやって来て何かをしきりに聞いてきたと言う。
「わたくしはダメですから。エイゴ分からないからって日本語で一所懸命断ってるのに、身振り手振りで何か聞いてきましたのよ」
「奥様。そりゃ、相手が日本語分からないのに、いくら日本語で言ったって通じないしょ」
「でもやっぱり分からないから。ダメ。ワカラナイ。ゴメンナサイって言ってたら、そのうちあきらめたのかしら。行ってしまいましたのよ」

 この奥様だけは一人あまり動転も興奮もなさらず、憤慨もされていなかったのだが、テキは話しかけている間に、確実に仲間に鞄を置き引きさせたのだった。
「あきらめて行ってしまいましたのヨ」
ではなくて仕事が終わったから消えてしまったのだった。

 五つ星だから、鍵の掛かった部屋だから、バッグに鍵をかけたからと、金目のものを入れ、女性一人にバッグの見張りをさせたばっかりに、前の事件の被害届が入っている鞄を盗られて、それがないと前に盗られた方の保険が下りない。そーいうヤヤこしい事態になってしまったのであった。




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