セストリエーレのゲレンデでイタリア人がこちらの顔見ながら「キムーラ、キムーラ」とか呼ぶので、なんのことかと思ったら、木村公宣がセストリエーレに来たのでジャッポネーゼを見てそう呼びかけているのであった。

イタリア人は日本人を見ると、たいていは
「チネーゼ(中国人)か?」と聞くのであるが、「いや、日本人だ」と胸を張れば、今度は人のことスズーキとかホンーダとかバイクの名前で呼ぶ。
「バカにすんな」と怒ったりもしてたのだが、ま、連中も悪気があってそう言ってるわけではない。イタリア人が知っている日本の代表的な人なり物なりがその辺なんだというのは、お互い様で仕方ないのかもしれない。でも、こちらは、イタリア人を見たからって、フィアット〜だのフェッラーリ〜だのアルマーニなんて呼ばないけどね。

ローマで暮らした頃、「イロイート、アッカアッカ」と人の顔を見ると話しかけるイタリア人がいて、「何を言うとんのかいな、こいつ」と最初の頃は意味が分からず、曖昧に笑って、肯き返したりしてたのだが、そのうち、イタリア語では「H」は無声音でアッカと発音することや、「H」で始まる単語がイタリア語にはあまりないと言うことが分かってきた。

だから、HeinosukeとかHongKongのような「H」で始まる言葉はイタリア人は苦手で、発音しにくいのである。かなり情けないが、つい「エイノスーケ」とか「オンコーン」とか発音してしまう。

「イロイート、アッカアッカ」とは、Hiro-Hitoつまり、昭和裕仁天皇のことで、ヒーロヒートと発音できないイタリア人が、「H」抜きで発音してから、オソレ多くも「H」二つを付け足しているわけなのであった。

ペルージアに移籍したサッカーの中田英寿のことをイタリア人が「アッカ」と呼んでいると言う記事を読むと、人間つーのは十年、二十年ぐらいではあんまり変わらんナ、と思うのである。依然として国際化しない欧州一の辺境カントリーの住人イタリアーノは、「Hidetoshi英寿」が発音しにくいので「アッカ」と呼んで済ませているわけである。我らのナカタを「イデトーシ、アッカ」ならまだしも、「アッカ」だけでは、ちょっとヒドいよーな気もするけど、天皇と実績はこれからの新参者では、ま、これも仕方ないか。
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