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「ゴンドラの陸に上がりしサンマルコ」の巻
波が押し寄せ、陸に上がったゴンドラ

 久しぶりにヴェネツィアへ行ってきた。冬のヴェネツィアを五年ぶりに見てみようと思ったのだ。真冬のこの時期になるとヴェネツィアは潮位が上がり、島中の路地の裏々までひたひたと海の水に溢れ、文字通り海の都となってしまうらしい。

 迷宮都市ヴェネツィアは希有な空間にちがいないが、その上更に、人の生活する路地までが水に覆われてしまうのであれば、その光景は是非とも目にしない訳にはいかないだろう。この街も他の多くのイタリアの都市と同様に夏は観光客で溢れ返っているが、冬はさすがにカルニヴァーレの季節を除けば閑散としている。そんな中、冬だというのに日本人の姿は非常に目立った。

 探索隊はスキーの行き帰りでヴェネツィアがゲートウェイになるので不思議でもなんでもないが、スキーでもないのに厳冬1月に群れなすジャポネーゼは奇妙な感じもする。しかし、パックツアー料金が馬鹿安なので、冬の局地的日本人多発現象はしかたないことかもしれない。

 イタリアで最もいい季節は?と質問されたら、躊躇することなく四月から六月までと答えることにしている。この時期は万物全て冬の厳しさから解き放たれ躍動し始める季節で、生命の息吹が活発になるのは目にも見え、肌にも感じられる。吸い込む空気の中にさえ命の香りの含まれる季節だから、春から初夏にかけてが一年中で一番いいと心中思うのだ。

 冬ほど安くはないにしても比較的妥当な料金で旅行できるし、旅費の点からもベストシーズンだと言えるだろう。せっかくイタリアを旅行するなら4月から6月までに行きなさい。

 世界中から観光客が押し寄せる7月8月は、実をいうとイタリアで一番過ごしにくい季節なのである。イタリアーノは誰でも、自分の住む場所を脱出して夏のヴァカンツァ(休暇)へ行こうと、日頃から算段努力するものである。家族がどんなヴァカンツァ(休暇)を過ごせるかは、一家の主の甲斐性なんであるから、そりゃまあ、一層、力が入りますワね。

 冬のイタリアは気候季節に左右されない教会や美術館巡り、グルメ紀行はできるけれど、イタリアを堪能するには、やはり春から初夏にかけて旅するのが一番です。
冬だというのに日本人が目立つ

長靴の人は水の中へ
ないひとは渡り廊下


水浸しサンマルコ。

 ヴェネツィアへ着いた夕方は、重く雲の立ちこめる空模様。翌朝には、雨に変わるあいにくの天気であった。こんな天気では予定していたブラーノ島やムラーノの島へ出かける気分にはならなかったので、ひとまず宿を出てサンマルコ広場への道を歩いてみる。

 道すがら多くの店の軒先に長靴が売られているのが目立ったが、その理由は直ちに分かる。サンマルコ広場へ近づくにつれ、商店を覗くとゴムモップで床の水を外へ押し出しているし、舗道が冠水してさざ波立つようになってきた。

「こりゃ、長靴買わんとアカンかな」と思ったら前方に渡り廊下みたいなものが見えてくる。 鉄のパイプで組んだ高さ70cmくらいの足場の上に、人が歩けるように板を渡して乗せてあるのだ。ヴェネツィアの街の要所要所はこの渡り廊下が張り巡らされていて、どこへ行くにもその足場に組まれた板の上を歩き回って、買い物したり散歩したりするわけだ。

 サンマルコ広場へ着いて眺めていると、潮位が上がり始めたのか、広場にあるいくつものマンホールからあっという間に水があふれ出してくる。その勢いは相当なもので、あの広いサンマルコがものの10分もしないうちに水浸し状態となってしまうのであった。

 水が吹き出して広場中に満ちてくるあまりの早さに、呆然としながら眺めていると、ヴェネツィアっ子は何食わぬ顔で長靴履いて広場を横切っていく。子供を乳母車に乗せた母親なんかは広場をジャブジャブと漕ぎ渡っている。水が溢れて運河沿いの歩道が冠水しようと、てんでに傘さし長靴で歩き回っているのだった。まあ、毎日生活している彼らにしたら、「いちいち驚いてなんかいられますかい」というのも尤もなんではありますけどね。

 よそ者は例外なく驚嘆の眼で、この街を覆い尽くす海水の怒濤の進撃にひたすら感動したりはしゃいだりしているようだ。こちらもすっかり興奮してサンマルコ広場で写真を撮りまくっていたら、イタリア人だけど、よその街から来た若い娘二人組が、
「写真撮って〜」
という。 別に撮って貰っても後で本人たちがその写真を手にすることはないのだが、イタリアーノはそう言う場合がある。
「いいよ。何枚でも撮ってあげるかんね」
と記念写真を撮ってあげたら、
「この長靴を特によ〜く写してね」
と水の中で、また二人して笑い転げるのであった。

 街ですれ違ったパトロール中の男女二人組のカラビニエーリ(憲兵)も膝が隠れんばかりの長靴を着用している。カッコイイので写真撮らせてくれと言ってみたのだが、笑いながらダメだと手を横に振るので、少し離れてから望遠で隠し撮りしたが、残念ながら露出不足であった。

 ヴェネツィア出発の朝も、荷物を出そうと準備し始めたらいきなり電話が鳴る。予定の時間より一時間も前なのに、もう荷物を出してくれというから理由を聞くと、
「運河の水位が上がって来て、橋の下をくぐれなくなる。今のうちにボートに積んで運ばないと、リアルト橋まで人の手で運ばなきゃ」
というではないか。実に全く、今回のヴェネツィア滞在は、沈みゆく都・ヴェネツィアを体感堪能する旅となった。
「新世紀 打ちいでてみれば ヴェネツィアは サンマルコ広場に 波せまりくる」
店内の水はモップで外へ。

サンマルコ広場もご覧の通り

おかあさんはジャブジャブとバギーで

「長靴をよ〜く写してね」と言って二人は笑った


  
「長靴をよ〜く写してね」と言って二人は笑った。ヴェネツィアアクアアルタ。

アクアアルタのときは波が押し寄せてヴェネツィア中が水浸し、でもこんな渡り廊下があるので

波が押し寄せている。


 ところで、2001年は「日本におけるイタリア年」である。買い物にしか来ない不思議な日本人に、少し知的な面にも目を向けさせんとイカン、とイタリアーノが考えたかどうかは知らないが、新世紀の幕開けからイタリアの接近は非常に文化的だ。日本にイタリアの文化なり国情をもっとよく知って貰おうと、国を挙げての文化事業に取り組むことになっているわけだ。

 日本各地で美術、デザイン、映画、陶芸、クルマ等、多岐にわたる催し物や展覧会が開催される。例えば、国立西洋美術館ではイタリア・ルネサンス「宮廷と都市の文化展」(3月20日〜7月8日)が展示される。

 ヴェネツィアに関連したものでは、3月24日〜5月27日まで上野の森美術館で「華麗なる18世紀イタリア、ヴェネツィア絵画展」が開かれるし、箱根ガラスの森美術館では4月21日〜9月20日の間「大ヴェネツィアグラス展」も催されることになっている。

 いつどこで、どんな催しがあるか、新聞やインターネットにも発表されている。日本にいながら、イタリアの文化と歴史にじかに触れることができる絶好の機会がやってきたのである。こりゃ、暫くはイタリアから目が離せません。今世紀もやっぱりイタリアだあ。


運河の水位が上がると、船は下をくぐれない

カルニヴァーレの仮面


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