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「グランデ・グエッラ特別編」の巻
青空とドロミテの岩峰

「ドロミテスーパースキーとセッラ・ロンダ」

 ドロミテスーパースキーは創設1975年。来シーズンは27周年を迎える。ヨーロッパでは犬猫も知る、このスキーシステムを、日本では知る者がない。知っていれば相当のイタリア通といわれてしまう程である。

 ドロミテスーパースキーとは、世界最大のスキーパスシステムの総称である。長野県がスッポリ納まる面積のドロミテエリアに、12のスキーエリアが密集している。45のスキーリゾートが、460のゴンドラ、テレキャビン、リフトで縦横に繋がれ、スキーパス一枚で1220kmの滑走が可能となる。

 そのドロミテを象徴する名峰が、マルモラーダ、セッラ、サッソルンゴの三山である。そのひとつ、セッラはグルッポ・ディ・セッラと呼ばれる山群だ。セッラはドロミテの象徴らしく、年間を通じて訪れる人も多い。セッラがドロミテのど真ん中にあるために、どこへ行くにも通らないわけにはいかない山なのだ。

 ドロマイトの峰々が連なるセッラのまわりの大小の渓谷には、宝石をばらまいたように村々が点在し、広大、機能的、且つダイナミックなスキー場群を形成している。

 セッラ・ロンダは十数年前に本誌が紹介して以来、体験する日本のスキーヤーも増えてきた。セッラ・ロンダしながら、周囲のスキー場を滑れば、体験できるピステと様々なシチュエーションは殆ど無限とも思われる。

 セッラ・ロンダはドロミテスーパースキーの利便性と規模を存分に活用したスキーサーカスなのである。今やセッラ・ロンダを体験せずして、ヨーロッパスキーを語る人は池の中のメダカと言ってもいいだろう。

ヴァルガルデナのリフト、すごい混んでる。

いざ、見参!ドロミテスーパースキー

ドロミテの岩峰めがけて滑る


「ドロミテの万華鏡、グランデ・グエッラ登場!」

 ドロミテスーパースキーさえ知らない日本で、グランデ・グエッラと聞いて、おおと膝を打つ人は殆どいない。毎日ふらつく新橋で、ネアンデルタール人を見つけるくらい難しい。グランデ・グエッラは、2000年に機能し始めたばかりだから、イタリアでもあまり知られていない。

 しからば、グランデ・グエッラの正体とはなんぞや。グランデ・グエッラ(大きい戦争=大戦)はセッラ・ロンダに次いでドロミテスーパースキーが企画したクルージングスキーツアーなのだ。正式名称はGiro Sciistico della Grande Guerra 1914-18。第一次大戦スキーサーカスというような意味なのだろう。

 大戦以前、ドロミテ一帯はオーストリア領土だった。ブレンネッロ峠以南、アルプス南チロルの一帯の領有を主張するイタリアは、1915年、三国同盟を破棄して参戦した。サラエヴォの銃声一発。ヨーロッパ中を戦渦に巻き込み、850万人を超える戦死者を出した第一次大戦。ドロミテの山岳地帯でオーストリアと対峙したイタリア軍の地下要塞や塹壕などを、スキーしながら見せて戦跡巡りにしてしまった訳なのだ。


先ず、Monte Pelmoへ向かう探索隊

朝一番、誰もいない完全整備のピステ。スキーヤー能戸俊輔


「総滑走距離40km、総移動距離90km。
ドロミテが一日で分かるグランデ・グエッラ」

 ドロミテ・チヴェッタコルティナアルタバディーアアラッバマルモラーダの五大スキーエリアをリフトを乗り継ぎ一巡りさせてしまう。総滑走距離40km、総移動距離90kmは、自画自賛も尤もな莫迦でかスケール。

 チヴェッタ、ペルモ、チンクェ・トッリ、トファーナ、ラガッツオーイ、コントゥリネス、セットサッス、セッラ、マルモラーダ。確かに一挙堂々、ドロミテの千両役者揃い踏みのパノラマが、老いも若きも楽しめる。

 スキーツアーの移動距離は91kmm。そのうちスキーで滑る距離が40km。ゴンドラリフトで18km。バスで移動する距離が32km、馬に引いて貰うところが1.5km。総計91kmを一日で回れば、ドロミテの有名なポイントを万華鏡を覗くように堪能できるしかけとなっている。
コルティナのチンクェ・トッリの脇を滑って

ラガッツオーイにかけられたフニヴィアが見える

このワイヤーであそこまで登る!


「早起きし身をもって知るグランデ・グエッラ」

 グランデ・グエッラは、8時半にリフトが動き出すのを待って昇り始めないと、その日のうちには帰って来れない。なにしろ90kmだ。コル・ディ・バールディ、朝一番の誰もいないバーン。全山一部の隙もなく整備されたピスタ・サレーレからペスクルに到着すると、9時半にスキーバスが接続している。セルヴァ・ディ・カドーレ〜フェダーレ間13kmはバスで移動する。フェダーレからアヴェラウへリフトで昇り、チンクェ・トッリを右に見ながら滑り降りれば、ファルツァーレゴ峠へ辿り着ける。

 ここからが午前中のハイライト。天空を切り裂くラガッツオーイからフニヴィアを一気に昇り、Armentarola=アルメンタローラへ向けて8.5kmの連続絶景ピステを滑って行くと、石造りのスコトーニ・ヒュッテが見えてくる。ヒュッテの背後にはドロミテの岩峰が。ここで日光浴するイタリアーノと、ひと時の憩いを楽しもう。

 休憩の後、滑り出せば大斜面の左手に、目の覚めるような青氷で覆われた岩壁を眼にする筈だ。記念写真を忘れないように撮っておきたい。やがて、アルメンタローラに近づき、左へ大きく曲がると、馬が二頭いて、ここからは、馬ゾリに引かれて1.5km程を登坂する。2馬力はゆっくりと、六十人以上のスキーヤーの一団を引っ張って走り出す。

 馬が終わればまたリフト。昇れば、お馴染みセッラ山群の全容が見渡せ、マルモラーダチヴェッタのパノラマも一望できる。ドロミテの万華鏡を実感できるポイントだ。

 ここから、右へ行けばサンカッシアーノ、ラ・ヴィッラのエリアへ連絡しセッラ・ロンダのコースの一部だが、グランデ・グエッラではコルヴァーラ、アラッバ方向へ向かい、プラロンジアで昼食を取ることにしよう。ここまでの滑走距離が20km、移動距離は約47km。全行程のちょうど半分をこなしたことになる。昼食後後半に備えてワインで喉を潤し、パスタやリゾットで腹ごしらえしておこう。


スコトーニ・ヒュッテで休憩

青氷で覆われた岩壁

ここだけは、二頭立ての馬が引いてくれる


「疾駆する精神、浮揚する肉体
ドロミテ最高峰マルモラーダを滑空しよう」

 アラッバのメインピステ、ポルタ・ヴェスコーヴォへテレキャビンで昇り、途中で右のパドンへ降りていけばマルガチャペラへ到着する。ここからアッレゲへシャトルバスがある。もう充分堪能したというスキーヤーはバスで帰ることもできる。

 未だ体力も闘志も残っている者は、黙って、ここからフニヴィア三本でマルモラーダに登るといい。この先に、この世のものと思えない世界が広がっている。グランデ・グエッラ後半のハイライトは、なんと言ってもこのマルモラーダであるにちがいない。

 ドロミテ最高峰マルモラーダ(3342m)は、三千m級のドロミテ山群の中でも一際高く聳え立つ。フニヴィアの基点は標高1446m、滑り出しトップが3269m、標高差は実に1823mもある。それをたった三本の空中ケーブル、途中二回の乗り換えで一気に運んでしまう。

 マルモラーダから見えるセッラとサッソルンゴは圧倒的なオーラを放っていた。その姿は神々しいとさえ感じられた。見ることもなく、想像することすらなかった衝撃が、今も網膜に焼き付いて消えることがない。

 マルモラーダ・マルガチャペラのロングコース8.5km を滑って、体力と時間が許せばSerraidi Sottoguda=セッライ・ディ・ソットグーダも見ておくべきだろう。冬の間中殆ど日の当たらない、大氷壁大氷柱大岩壁の間を滑り抜け、グランデ・グエッラ最後を締めくくろう。

 チヴェッタからだけではなく、アラッバコルティナマルモラーダからもグランデ・グエッラは挑戦できる。行く度に新たな感動と発見があるドロミテ。グランデ・グエッラの新しい金看板が加わったドロミテ。キラ星のごとく輝くドロミテのスターたちに遭うために、今シーズンは、グランデ・グエッラに挑戦しないわけにはいかないだろう。
マルモラーダの大斜面を滑空する

ソットグーダの入り口

気力を振り絞って来ました。


オーラを放つ、サッソルンゴとセッラ山群

マルモラーダのフニヴィア、まさに空中ケーブル


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