マルモラーダを滑るには、ドロミテのチヴェッタかアラッバをベースにするのがお勧めである。チヴェッタからマルガチャペラまではバスが出ているし、ドロミテスーパースキーパスを持っていれば誰もが利用できる。

アラッバからならバスに乗る必要すらない。ポルタ・ヴェスコヴォまで上って、右へ右へ滑り降りれば、マルガチャペラまで辿り着ける。セッラ・ロンダはポルドイ峠を目指して左へ左へいくが、その逆を行けばいいわけだ。

ポルタ・ヴェスコヴォまで上がってマルガチャペラを目指すことを繰り返す内に、フニヴィアは真っ直ぐ山頂まで行ってしまうが、テレキャビンには中間駅がありスキーヤーが降りていくことに気がついた。

マルモラーダへ直接行くなら、テレキャビンの中間駅でおりればよいのだ。降りたら左のJバーリフト10番で上がって一本滑る。途中に絶好の見晴らし台があって眺めが抜群。誰もが必ず立ち止まってしまう。とりわけモンテペルモの姿が美しい。

続いてリフト12番でパッソパドン(2370m)へ登る。氷原の上を相当の距離を行く。天候が悪ければ吹きさらしとなり、マルモラーダへ辿り着くのは困難だろう。登る途中で茅ヶ崎の烏帽子岩のような山を見つけたので、早速ドロミテエボシと命名しておいた。

パドンまで来れば前方に、マルモラーダの大斜面が見えてくる。それにしてもなんという圧倒的な斜面なのだろう。目の前に展開する、岩石の集積と厖大な降雪が創造した、途方もない造形マルモラーダ。

マルガチャペラまで、この自然の造形を愛で楽しみながら滑っていこう。ここまでアラッバから直行で一時間。ゴンドラを待たずに乗れたとして三本乗り継ぐので、山頂までは更に一時間は見ておきたい。混んだら一時間半。土日は混み合うので、極力避けた方がいいだろう。

マルガチャペラからゴンドラの終点まで行くと、そのひとつ先の峰がマルモラーダの山頂である。確かに、そうなのだが、自分の肉眼で見ているのに実際の大きさが分からない。

大きさが分からないだけでなく距離感も失われてしまう。自分の位置から300m先なのか、500mあるのか目測ができない。普段とあまりにも違うスケールの自然に向き合うと、人間の物差しは通用しなくなってしまう。

アラッバからマルモラーダを目指して移動して来る間に、脳中枢に集積する情報量は厖大なものになる。普段の生活では見慣れた光景に手慣れた仕事、あとは酒を呑むぐらいと、殆ど脳は活動していないようなものである。

そこへいきなり迫力満点のドロミテが有無を言わさぬ勢いで流れ込んでくれば、処理能力の限界をはるかに越えてしまっても、当たり前なのかもしれない。

視界の端に小さなちびっ子スキーヤーたちが現れたかと思うと、それが立派な大人の一団なのだった。それでも、人間がいてくれて初めてマルモラーダの大きさが分かるのであった。
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パドンへ登る
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茅ヶ崎のエボシ岩がドロミテにも
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マルモラーダの大斜面が見えた
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