チャンパックへ登ると青空の真ん中を飛行機雲が切り裂いていた。太陽が昇りきらない早朝のスキー場は人影もまばら、動き出したばかりのリフトには乗る人もいない。深呼吸して氷点下10度の空気を吸いこんでみると、気管をちりちりと鳴らす音がした。

ラテマール、ルージアと踏破して翌三日目の朝は快晴だった。晴れたら是非とも行きたいのは、カナツェイから上ったベルヴェデーレのエリアである。即座にヴィーゴ(1390m)からペニア(1555m)までのクルマをチャーターした。

距離にして15?、所要時間は20分足らず。ドロミテスーパースキーパスで乗れるシャトルバスもあるが、ヴィーゴから一旦、カンピテッロまで行って乗り換えることになる。送迎に20人乗りのミニバスをチャーターしても、ひとり9ユーロ(1200円)足らず。帰りもカンピテッロまで迎えに来てくれるし、貴重な時間を考えれば安いものである。

ファッサ渓谷のゆるやかな勾配を登る途中に、カンピテッロ(1440m)とカナツェイ(標高1460m)の村がある。どちらもヴァル・ディ・ファッサの拠点で、名にしおうドロミテ絶景ポイントへの登り口となっている。カンピテッロからコルロデッラ、カナツェイからはベルヴェデーレへ上ることができるのだ。

ペニアからもっと先へいけば、マルモラーダが望めるフェダイア峠にさしかかる。更に進めばソット・グーダ、マルガチャペラに至って、そこからはマルモラーダ山頂へのフニヴィアが出ているのだ。

チャンパックには03年1月、アラッバから遠征してきたことがある。パッソ・ポルドイを越えてカナツェイからバスに乗ってやって来たのだ。今朝はヴィーゴからなので、ペニアからチャンパックまでのテレキャビンで上っても、まだ九時ちょっと過ぎたばかりだ。

ここはドロミテでは珍しくどこにも連係していないスキー場なので、テレキャビンで上ったレストランをミーティングポイントにしておけば迷子になることはない。

はぐれる心配がないので久しぶりにゆったり、と、頂上からドロミテ山塊の眺望を愛で、ファッサ渓谷を隔てて見えるセッラ山群目がけて、思う存分滑ることができたのだった。