パッソ・セッラからの眺めを楽しんだら、峠を少し下って、リフージオ・パッソ・セッラからサッソルンゴの東側に掛かるテレキャビンに乗ってみよう。ヨーロッパ各地からの観光客で、広い駐車場はいつも賑わいを見せている。

リフージオ・パッソ・セッラ(2187m)から頂上のトーニ・デメツッ(2685m)小屋まで、ゆっくり歩いて小一時間、テレキャビンなら15分である。頂上からは、西側へ降りるトレッキングコースがありアルペ・ディ・シウジへも下りていくことができるようになっている。

ジーロ・ディ・イタリアは、イタリア全土一周の自転車ロードレースだが、ジーロ・デル・サッソルンゴと呼ばれる、サッソルンゴ一周のトレッキングコースがある。

パッソ・セッラをスタートしてトーニ・デメッツ小屋まで登り、西側斜面を降りて、サッソルンゴ北壁(1000mを越える垂直の壁)の下を回り込んで、パッソ・セッラへ戻るコースがジーロ・デル・サッソルンゴなのである。

所要時間は途中のヴィチェンツァ小屋まで35分、更に北へ下りてエミリオ・コミチ小屋(2153m)までが2時間。そこからスタート地点のパッソ・セッラへ戻るのに35分である。

サッソルンゴの回りを四時間半で回るトレッキングコースは、テレキャビンを利用すれば三時間半に短縮できる。時間と体力のない向きには、こちらがお勧めである。

セッラ・ロンダではサッソルンゴの偉容を見上げながら、落下しつつ滑るので、そこをよじ登ることはあまり考えない。

おまけに、冬の間リフトは外されている。何度滑ろうとも、夏になればテレキャビンが掛かり、誰しも登ることができるとは想像しないのである。

ところが、このリフトは大人気で行列ができるほど混むこともあるそなのだ。そういうときは、待つ間写真でも撮りながら、雄大なサッソルンゴと麓に広がる、のどかな景色を眺めていてもいいだろう。

折しも、数頭の牛が草をはみ、牧童がノンビリと見守るかたわらを、ひとりまた一人と走ったりする人がいて、夏の終わりのランニングかと眺めおれば、あとからあとから走る人の切れ目がない。

何かあらんと問わば、毎年九月の第三日曜日に、ヴァルガルデナを走破するマラソン大会が開催されるという。名付けてヴァルガルデナ・マラソン。

オルティゼイのピアッツァ・サン・アントニオ(1210m)をスタートしてサッソルンゴ直下のリフージオ・トーニ・デメッツ(2685m)まで、距離19.1km、標高差1475mを駆け登るレースだという。

偶然なのだが、その日がヴァルガルデナ・マラソンの当日ということなのであった。どうも、あとからあとから、本格的な走りっぷりの人々が走ってくるはずである。