コンテッサ・エンテッリーナはパレルモから内陸へ80kmほど入った、海抜571mの丘陵地帯の村である。面積、13,637haに対して人口はわずか2000人余り、人口密度、1km平方mあたり15人という土地にブドウ畑が広がっている。

18世紀末のフランス革命後、ナポレオンは破竹の勢いで皇帝への道を上りつつあった。ナポレオンが仕掛けた第二イタリア戦争(1799年)に、ブルボン家のナポリ王国は敗退してしまう。その結果、国王フェルディナンド四世はシチリアへ亡命せざるをえなくなった。

コンテッサ・エンテッリーナは、国王と一緒に亡命した王妃マリアカロリーナが身を置いた場所ということなのである。ドンナフガータ(Donna Fugata=逃げてきた女性)のネーミングは、この史実に由来していたのであった。

コンテッサ・エンテッリーナはヴィスコンティが映画化した、ジュゼッペトマージの小説「山猫」の舞台となった土地でもある。1860年のイタリア独立後に没落していく、貴族の最後の残映が描かれている。

エリミ人たちがエンテッラにワイン造りのため、最初のブドウ畑を作ったのは紀元前四世紀と伝えられている。カラリとした気候、風通しのよい土地、十分な日照、とブドウ栽培の条件は三拍子揃って申し分ない。

赤ワイン造りにはネーロ・ダーヴォラ、カベルネソーヴィニョン、メルロー、シラー種のブドウが栽培され、白ワイン用にはカタラット、アンソーニカ、ダマスキーノ、グレカーニコ、シャルドネ、ソーヴィニョン、ミューラー・トゥルガウが栽培されている。八月から十月に収穫されるブドウは糖度が高く、品質の高いワイン造りに適している。