言われて見れば成る程と思うのに、イタリアが山国でアルペン王国でスキー天国だという簡単な事実が、なかなか浸透しないのは、殆どの人が、イタリアがスキー天国という事実に、価値を見ないからであろう。

イタリアは元来、日本の公教育の中で「歴史と太陽と海の国」として定義され位置づけられてきた。一方、企業としてのメディアは多数が求め、売れる情報を商品化し金にしようとする。だから、売れないものには目を向けない。

ちょうど、この原稿に取りかかっている今、世界中のテレビでダイアナ妃の葬儀の模様がが放送されているが、ダイアナ報道はその極端な例である。人の写真を撮って売り込むパパラッチがいて、写真を掲載して売る雑誌社があって、買う人間がいる。核心は、この構造の中でダイアナ妃が死に追いやられたと言う事実である。

誰も言わないので、この際だから、言っておこう。いくら市場経済だ自由主義だと言っても、売れれば何でも商品化するのは間違いである。買う奴がいるからといって、売ってはいけないものがあるのだと銘ずべきである。

さて、イタリアだが、この20年というもの、ファッションだ、デザインだ、へちまだ、グルメだ、鰯の頭だと、人々の価値は細分化し、関心の所在もますます分散化するばかりである。しかし、そうなると逆に、イタリアは焦点を当てることが多すぎて、なかなかスキー場までスポットが当たらない。

しかし、それはイタリアにとっても、私たちにとっても幸いなことなのかもしれない。
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