セストリエーレへ向かう車がマルペンサ空港を出て一時間程、アオスタのスキー場へ向かう高速道A4を走り、途中からSS24でトリノの北側を抜けて、ピエモンテの渓谷へ入っていく。

結構暗い道を(イタリアではそれが普通だが)暫く行くとセストリエーレの村に着く。ここは、夜間照明にメインバーンが浮かび上がり、イタリアのスキー場には珍しい雰囲気を醸し出している。
「おー、ナイターがあるのか?」と一瞬思ったが、そんな筈はない。イタリアに限って間違ってもナイターはありえない。

ジャポネーゼはスキー場にナイターがないと聞くと、びっくりするが、「日本じゃ夜になっても照明つけてスキーする」と言えば、イタリアーノは目を丸くして驚く。

なんたって、イタリアーノがスキーに行くとなると、セッティマーナ・ビアンカ=settimana bianca(白い週間)である。最低でも一週間休みを取って六泊ないし七泊が基本である。

イタリアのスキー場はどこもでかいし、すいている。一週間もいて昼間の内に30kmも40kmも滑ってしまえば、どーして夜に滑るのか理解できないのは当たり前かもしれない。

アフタースキーをイタリア語でDopo sci=ドーポシーと言うが、スキーが終わればフルコースとワインのディナーが待っている。食事のあとはディスコやバールで夜更けまで盛り上がってるのに、ナイターなんか誰も来やしない。
「何が悲しくて、景色も見えない暗闇に明かりともして、滑らなアカンの」となりますワね。

日本じゃそれだけ日中に滑るのは先ず無理である。だから、夜まで滑りたい気持ちも分からなくはない。何しろ、最も多いパターンが日帰りか週末の一泊二日なんだから、なんたって時間が惜しい。
「夜だって滑んなきゃ、渋滞する道を苦労してきたカイがねーだろ」おっしゃる通り、あなたの気持ちもよーく分かります。

昼飯だって、こちらがラーメンかカレーでさっさとすませて、マジメに滑ってもせいぜい10km、15kmがよーやくである。むこうは昼からキッチリ喰って、ヴィーノもしっかり飲んで赤い顔でのったらしてても30km、40kmである。うらやましいなぁ、ホントに。

日本は豊かな国で、反対にイタリアは貧しい国、と教えられてきたが、来てみれば彼らの方がよっぽど豊かで、日本人の生活はまだ未だ貧しいという気がするのは錯覚なのだろうか。
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