今年の冬は長い冬になるかもしれない。普通なら一月になって見る雪景色を十一月に見てしまった。ドロミテ探索隊員の野尻久枝、岡安重美に連れられて、志賀高原熊ノ湯温泉へ行ってきたのだ。

仕事を終えた金曜日の晩、新橋で軽い食事をすませて東京駅へ向かう。丸の内で夜行バスに乗るためだ。久しぶりの修学旅行気分。スキーを始めた頃、夜行バスに乗って志賀や栂池へ通ったのは、もう20年も前になってしまう。

あの頃は丸の内だけでなく八重洲でも新宿西口でも、駐車できる場所には、ひしめくように夜行バスが並んでいた。大挙してスキー場へ向かう出発待ちの喧噪。バスの中には、昂揚する気分が充満していた。

幸福な時代だったが世の中の動きに連れて、人々はいつの間にか夜行バスでスキーに行くことから遠ざかってしまった。今回は野尻久枝がエイティエイトスキークラブの会長に就任した、お祝いの初滑りに便乗することになったのだ。

新丸ビルに着くと、野尻がバスの中から手を振っている。三月のアルタ・プステリーア以来だが、相変わらず元気そうだ。バスの中は殆どが中高年。青少年は白いご飯に振りかけられた黒ゴマ程度にいるだけである。

乗り合わせたバスに若い人がいないだけなのか、それとも青少年は夜行バスなんかに乗らず、自分たちのクルマで行ってしまうのか。まさか、スキーそのものが中高年のスポーツになってしまった、というわけではないでしょうな。

野尻と岡安は2001年のヴァッレ・イザルコ、2002年アルタ・プステリーアと探索隊に参加した。二人とも準指導員だ。若い岡安がアクティブな滑りをするのは当然だが、野尻は一歩もひけを取ることがない。ドロミテの長距離を実に力強い滑りで走破してきた。

年を聞いて、ひと回り半くらい上らしいと言うので、またびっくり。まったく信じられない元気印だ。秘訣は、普段からじっとしていないこと。近所の仲間と毎日卓球やって、ゴルフにスキーと年中体を動かしているそうだ。
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