雲ひとつなく晴れ渡る朝。デイエゴとジャンニが手を振って見送る中、探索隊はアラッバをあとにヴェローナへ向かった。ドライバーのアゴスティーノはヴェローナへ送るだけと聞いていたようだが、実は、ヴェローナの前に一ヶ所寄ることにしているところがあった。イタリアワイン三大銘醸のひとつと言われるヴァルポリチェッラのワイナリーである。
スキーの次はなんといっても、飲むわ、食べるわがメインテーマのイタリアスキー探索隊。ある時は、イタリアワイン探索隊。またあるときは、イタリアグルメ探索隊。そして滑っている時は、イタリアスキー探索隊なんだから忙しい。ヴェローナに二泊するのも、観光もショッピングもしたいが、それよりなにより、おいしいワイン、おいしい食事の探索が目的というわけでもあるのだ。
ヴェネト州は、トスカーナ州の「ブルネッロ・ディ・モンタルチーノ」ピエモンテ州の「バッローロ」と並んで世界に名高いワインの宝庫。イタリアスキーに来るということは、豊饒のワインの大海にヨットで繰り出すようなもので、どこへ行っても土地の人々が
「ワインの海にデカンタを投げ込んで、好きなだけ飲みんさい」
とおっしゃるもんだから、イタリアにいる間、こちらはしょっちゅう酔っぱらって、まあ、殆どアル中みたいなもんでありますけどね。
ドロミテスーパースキーに来れば、まわりはワイン畑の村ばかり、通り道にはイタリア三大銘醸のワイン蔵ヴァルポリチェッラがあるというのに、そのワイン蔵へ乱入しないで帰ると言えば、隊員達からはたちまちブーイングの嵐がわき起こるにちがいない。いつも細やかな気を使う、繊細な隊長としては、ヴェローナ近郊の村、ヴァルポリチェッラを選んで、探索隊員の苦労をねぎらうことにしてあったのも当然であろう。
「ヴェローナへ行く途中、ヴァルポリチェッラへ寄って行くことになってるんだけど」
アゴスティーノに言ってみると、
「ヴェローナなら、アウトストラーダじゃなくて、違う道を行こうと思ってたけど、ヴァルポ リチェッラへ寄るなら、オーラからアウトストラーダへ乗った方が早いね」
「できればポルドイ峠へ戻らないで、マルモラーダの反対側を回ってみたいんだけど」
「そうだね、ピエーヴェ、カプリーレ、ファルカーデを通って、ペレグリーノ峠からモエナへ抜ければマルモラーダの反対側を回るね」
「と言うことは・・・チヴェッタやトレ・ヴァッリも通るのかな?」
「そうだね。途中で、わたしが住んでるファルカーデの村も見られるよ」
アゴスティーノは妥当と思われる追加料金だけで、回り道を快く引き受けてくれた。聞けば彼はお父さんと二人で、バス会社をやっているらしい。どーりで、ただの運転手には見えないしっかり者のはずだ。
ヴェローナへ送って戻ってくるだけなら、午後二時には帰ってこられる昼飯前の軽い仕事と言えるが、途中でヴァルポリチェッラへ寄ってワイナリー見学して、テイスティングもするとなれば、話は全く別だ。その後食事だってするだろうし、昼食後、ヴェローナまで送って、ファルカーデへ帰れば、夜の八時も回るだろう。フツーの運転手だったら、絶対断られるところである。
アゴスティーノのおかげで、ともあれ、こちらも行ったことがないドロミテスーパースキーの(11)TRE VALLI=トレ・ヴァッリ滑走可能距離98kmと、(12)CIVETTA=チヴェッタ滑走可能距離80kmのスキー場をバスの上からだが、見られたし雰囲気を知ることができた。ドロミテスーパースキー完全制覇の来シーズンに向けて貴重な一歩を踏み出せたのであった。
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ステファーニアが予約してくれたレストラン。
ヴェネト州のワインがわれわれを待っていた |
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早速、テースティングするプロフェッソーレノート |
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続いてエゴイスタ洋子も |
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隊長にヴァルポリチェッラを勧める洋子 |
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